Vol. 1

私、「友情結婚」をしました

投稿日

2021.12.07

更新日

2022.08.12

私、「友情結婚」をしました

皆さん、初めまして。佐藤と申します。
私は友情結婚相談所「カラーズ」に入会し、友情結婚(成婚退会)しました。現在はパートナーと子どもと生活しています。

こちらのブログを読まれている方は、友情結婚が気になっていたり、すでに活動をされていたり、成婚退会されていたりと様々だと思います。なかなかメジャーではない「友情結婚」。実際どう?どんな生活?他の人はどんな感じ?と、友情結婚前でも、後でも、気になるものではないでしょうか。

これから数回に渡り、友情結婚をするまでと、した後の、できるだけリアルな姿をお伝えしていきたいと思います。少しでも参考になれば、幸いです。

目次

セクシャリティの自認

初回ですので、まずは自己紹介と、カラーズに入会するまでのことを書きたいと思います。
私は、性的欲求がない、いわゆる「ノンセクシャル」です。
人を好きになっても、性的感情を向けることができません。子どもを授かるためならまだしも、「好き=性行為をする」という図式が理解できないのです。好きだから一緒にいるだけでよかったのに、相手に求められ、それを定期的にしないといけないことが不思議でたまりませんでした。

感情がないものを、したいと思わないことを、しなければいけないことは苦痛でした。食べる習慣がなく、食べたいとも思わない食べ物を「この国では食べるのが普通だから食べなさい」と強要されているような感覚でした。

「好きならできる」「そう思わないのは本当に好きではないから」。そんな言葉に何度も傷つけられました。好きだと言って、好きだと言われて、手を繋いで、一緒にいて幸せで。そんな温かくて幸せな感情を、ただ性行為ができないというだけで「本物ではない」と言われるのは悲しいことでした。

好きだという感情があれば、どちらかがしたくないことを、する必要はないのではないか。そう思うのは一般的には違うようで、私は普通ではないのだと知りました。

それじゃあ、私は人を「本当に」好きになれない。そう気付いた時には、ぽっかりと心に穴が空いた気持ちになりました。どうして普通にできないのだろう、そう思えないのだろう、本当に好きじゃないのかもしれない、じゃあ、この気持ちは全部嘘だった?自分の感情が間違っていると言われることに、苦痛と絶望を感じていました。

そういう私の性質を「ノンセクシャル」というのだと知ったのは、18歳のことでした。
付き合っている彼のことが好きなのに、会うのが怖い。会いたくない。
そう思ってしまう自分のことが嫌で仕方なくて、けれど恐怖は消えなくて、一人で泣いていた18歳の夏のことを、今でも思い出します。

恋愛結婚を諦めるまで

友情結婚を知ったのは、二十代になってからでした。けれど、他人への好意はあったので、知ってすぐには友情結婚をしたいと思っていませんでした。

「恋愛結婚-性行為=理想の結婚」と、ノンセクシャル同士で結婚したいという考えだったので、お互いが恋愛的に好きではない結婚は、自分の理想とは少しだけ違っていたのです。
友情結婚をしようと思ったのは、結婚適齢期になってからでした。周りの友人がどんどん結婚していき、「私ってこのまま一人なのかな?」と不安になったのです。

ありがたいことに異性から好意を寄せられることもありましたし、好きな人もいました。けれど、相手の性的な思考や言動に触れるたびに「あ、この人も駄目だ」と壁を作ってしまいました。この人が同じノンセクシャルだったらどれだけ良いか、と何度も思いました。

恋愛結婚ができる人でさえ、未婚率が上がっている時代です。たくさんの人の中からノンセクシャルの方と出会って、自分がその人を好きになって、相手からも好かれて、というノンセクシャル同士の恋愛結婚は、とてつもなく確率の低いことではないか、と思いました。しかも自分がそうであるように、相手がノンセクシャルであることは、きっと隠されています。それを見極めることはとても難しいことだと思いました。

私は、それから一年間、良い人と出会えなかったら恋愛結婚を諦め、友情結婚に向けて動き出そうと決めました。そして一年経ち、やはり恋愛結婚の難しさを感じて、友情結婚活動を始めました。

恋愛結婚を諦めるのは勇気がいることかもしれません。実際私も、あと一年だけ待ってみよう、と踏ん切りをつけるのに時間がかかりました。けれど、私の場合は年齢が後押ししたように思います。今まで結婚できる可能性が少なかったのに、これからも自分の理想の相手と出会える可能性はそう高くないと思ったのです。また、いずれは子どもが欲しかったのと、地方に住んでいたため、もし友情結婚をするとなると母数が多い都会に転居する可能性が高く、転職を視野に入れたときに若い方が良いだろうとも考え、妊娠やキャリア形成のタイムリミットも考慮してのことでした。

結婚をしたかった理由

結婚をしたい理由として、生涯を一人で終えるのは嫌だという思いと、両親を安心させたいという思いがありました。私は両親を含めた家族が好きなので、そういう家庭に憧れがありましたし、大好きな両親が生きていた証を残したいと思っていました。そのため、実は子どもはそれほど好きではなかったのですが、子どもを産むこと前提で活動を開始しました。

友情結婚活動の方法

友情結婚に向けてSNSや掲示板でも活動をしましたが、相手の身元がはっきりしていないことに不安を感じ、あまり進みませんでした。また、前述のようにノンセクシャル同士の結婚に理想があり、子どもを授かって、いわゆる普通の家族を持ちたいという気持ちが強くあったため、「パートナーありのゲイ」の方が多かったのも、うまく活動が進まなかった理由の一つです。

カラーズの存在は、婚活を始める前に偶然SNSで知りました。いつか友情結婚を目指すならこの相談所にお世話になろう、と前から決めていました。
やはり、身元がはっきりしていることと、相手のセクシャリティや考え方、聞きづらいけれど生活に直結する、年収などの情報が事前に提示されていることが信頼に繋がり、入会してからはカラーズでのみ婚活を続けました。そしてカラーズで無事に成婚することができました。

現在

これまでも個人的に友情結婚について発信してきましたが、「友情結婚して後悔していないですか?」とよく聞かれます。

私の答えは「後悔していない」です。

もちろん、友情結婚した人が必ずしも後悔しないとは限りません。私も、ここは想定とちょっと違ったかな、と思うこともあります。
けれど、成婚退会して数年経ち、今ではどこにでもいる、ありふれた家族として過ごしています。仕事をして、休日には子どもと遊んで、両親や義両親との関係も良好で、周りから怪しまれたこともありません。ただ他の家庭と違うのは、性行為が無いということだけです。

パートナーに恋愛感情はありませんが、家族という大きな船を一緒に動かしていく心強い相棒、という感じです。パートナーとああでもない、こうでもないと試行錯誤しながらの子育ては、大変ですが喜びも大きいです。

どうして普通じゃないのだろう、と絶望していた18歳の私には、こんな未来は想像できませんでした。
だからもし、かつての私と同じように悩んでいる方がいらっしゃれば、こういう生き方もあるのだと知って欲しいです。

sato
著者:佐藤

10代でノンセクシャルを知り、20代で恋愛結婚はできないと断念。一念発起してカラーズに入会後、友情結婚(成婚退会)しました。人工授精で子どもを授かり、現在は夫の高橋さんと協力しながら子育て真っ最中。元友情結婚活動者、結婚当事者のリアルな姿をお届けします。