Vol. 10

友情結婚と人工授精

投稿日

2022.08.18

こんにちは。カラーズに入会し、友情結婚(成婚退会)しました、佐藤と申します。

子どもが欲しかった私とパートナーの高橋さんは、人工授精で子どもを授かりました。前回までは人工授精に至るまでの計画や病院選び、検査などについて書きましたが、今回は実際の人工授精はどうだったかと、私自身の心と身体の変化について書いていきます。

目次

当日の心情

人工授精当日、私はついにこの日が来た!と待ち遠しい気持ちでいっぱいでした。一方で、もしこれで駄目だったら、次はまた一か月後か…という不安もありました。
一か月に一回しかチャンスがなく、その間も着々と自分は歳をとっていきます。私は人工授精当時はまだ若い方で、平均的にも遅くない年代だったのですが、もし年齢的に制限がある方は、この一か月が本当に待ち遠しく、辛い時間になるのではないかと少し感じました。

男性には抵抗がある?

勉強のため、色々と人工授精に関する情報を見ていると、男性は精液検査や精液の提出に抵抗がある方が多いとありました。プライドというか、恥ずかしさもあるのだとか(個人差はあると思いますが)。確かに私だったら嫌だな、とも思いましたが、女性だって病院の先生とはいえ、毎月のように下半身を露出するわけですから、それに比べて見られないだけいいじゃない?と思ったりもしました(笑)
私は性嫌悪もあったため、最初は、高橋さんが採取する=そういう行為をしている…という事実に嫌悪感が出るかもしれないと思いましたが、いざとなると生物的な感覚しかなく、生きていくには仕方がないよね、人間も動物だもんね、とあっさり自分の中に落とし込めました。

当日の流れ①病院に行くまで

時間の配分がよくわかっていなかったため、初回は仕事をお休みして臨みました。結果的に、お休みして良かったと思います。
高橋さんは採取を病院か自宅かで選べたのですが、自宅を選択し、私が病院で待っていて高橋さんと合流して受け取り、一人で診察に行くという流れになりました。病院では高橋さんも同席して良かったのですが、なんだか気まずい気持ちもあり、待つ時間も長かったので、一人の方が気が楽で良かったです。
当然ながら性的な接触が一切ない私たちですが、今回はさすがに(私だけかもしれませんが)、ちょっと意識しました。どういう顔で高橋さんの採取した物を受け取ればいいのか…と複雑な気持ちにもなりました。

当日の流れ②突然の不安と憎しみ?

当日はお昼ご飯を食べた後に高橋さんから容器を受け取り、病院に向かう手はずでした。病院の予約時間が近づくにつれ、朝までは「さぁ、やるぞ!」という気持ちだったのに、だんだんと影ってくるのが自分でもわかりました。
怖さはなかったのですが、駄目だったらどうしようという不安や、緊張もあったように思います。どうして、女性ばかり検査したり、注射したり、身体の中をいじられたり、我慢しないといけないんだろう。男性は出すだけで終わりで楽でいいね、というどうしようもない恨みがふくふくと膨れ上がってきました。
徐々に「冷静に考えたら、他人の体液を自分の身体の中に入れるのって、気持ち悪くない?」という気持ちが増して、心の中は大パニックになっていました。
それを、いわゆる普通の人たちは好きでやってるんだもんなぁと思うと、私にとっては到底理解できなかったです。生殖行為としてなら理解できなくはないものの、そういう理由ではなく好きでやっていることが、不思議でなりませんでした。
とはいえ、時間が刻々と過ぎ、高橋さんの容器を受け取る段になりました。もし、高橋さんに「頑張って」なんて言われたら、その場で怒ってしまうかもと思うくらいに気持ちにトゲがありました。何で私だけ頑張らないといけないの、嫌なことを何度もしないといけないの、と悔しくてたまらなかったのです。
実際は、高橋さんは「よろしくお願いします」とまっすぐ言ってくれて、私の沸点も少し下がりました。この人は自分の責任と、私がこれからすることを理解してくれているんだな、と思いました。

当日の流れ③人工授精

病院に着いて、まず受付で容器を渡しました。一時間弱、精液の処理に時間がかかるとのことで、病院の中で静かに過ごしました。
45分くらい経って呼ばれ、精液の状態は良好のため、今日は人工授精できますと言われました。検査の結果によっては、駄目ということもあるそうです。
診察室に呼ばれて椅子に上がると、少し緊張しましたが、不思議と嫌悪感はありませんでした。性的な感じというより、病院の処置、手術、のような感じで事務的に終わりました。
ただ、やはり器具を入れられるのが痛かったので、これをまた来月するかもしれないのか…と思うとテンションは下がりました。
人工授精(精液を入れる作業)自体は、本当に一瞬で終わりました。
処置が終わり、排卵を促すHcg注射を打ち、着床率を上げるための薬と、抗生物質を処方されました。その後はベッドがある部屋に移り、腰の下にクッションをして高くされ、20分くらい安静にしてから帰宅しました。

当日の流れ④人工授精後の体調不良

人工授精自体は無事に終わりましたが、自宅に帰ってから気持ち悪さと腹痛に襲われました。生理痛ほどではないものの、キューっと締め付けられるような痛みで、おそらく排卵痛ではないかと思います。
この痛みは当日から4日くらい続き、市販の鎮痛剤を飲むほどでした。3日目が一番ひどく、朝に鎮痛剤を飲んで、昼過ぎに効果が切れてまた飲むという感じで、結構辛かったです。
基礎体温もこれまでは綺麗に二層に分かれていたのに、途端にガタガタになりました。排卵をしているはずなのに高温期が来ず低いままで、若干ゆるやかに上昇しているかも?くらいの変化しかなく、今回は駄目だったのかなと落胆しました。

女性の負担

正直、人工授精後に体調不良があるとは思っていませんでした。また、もし駄目だったときの不安や憔悴、「私のせいかも?」「私がこうしてたから駄目だったのかも?」という気持ちは、男性には理解されにくいかもしれません。
女性の身体的な制限がかかるのは、妊娠してからだと思っていました。違うんですよね。人工授精してから、もしかしたらお腹に赤ちゃんがいるかもしれない、と思って過ごし始めるんです。駄目でも、子どもを授かれる可能性を上げたいと思い、食事に気を付けたり過ごし方を改めたりもします。そして授かったら、もっと気を付けるようになって、つわりや体重変化に苦しんで、色々悩んで、壮絶な痛みを伴って子どもを産みます。産んでからも、睡眠時間を削って、子どもを生かすために必死になります。
男性の方はどうでしょうか。人工授精の際に少し労力があっただけで、身体的には何も変化はありません。何も気を付けることはありません。それは生物学的に仕方のないことですが、女性がどういう気持ちで過ごしているか、ということだけは知っていて欲しいと切に思います。
友情結婚なら尚更、相手の気持ちを察することが疎かになってしまうかもしれません。ぜひ、お互い寄り添いながら、過ごして欲しいです。

結果を待つときの気持ち

少なくとも結果がわかるまでは2週間はかかります。「あの時こうしてたから駄目だったのかな」と後悔しないように、結果がわかるまでは身体が冷えないように気を付けたり、なるべく安静に過ごすようにしました。
以前、体験者の記事で「不妊治療してから生理が来るか待つ時間は、大学入試の結果発表を待つ時間のようで、それが毎月あるからしんどい」というのを読んだことがあったのですが、自分が当事者となってその気持ちがよくわかりました。
身体的に問題がなくても、妊娠できるとは限りません。そう思うと、命を授かるって本当にすごいことだなと思いました。
そうして、子どもを授かるまで待つ日々が続きました。

sato
著者:佐藤

10代でノンセクシャルを知り、20代で恋愛結婚はできないと断念。一念発起してカラーズに入会後、友情結婚(成婚退会)しました。人工授精で子どもを授かり、現在は夫の高橋さんと協力しながら子育て真っ最中。元友情結婚活動者、結婚当事者のリアルな姿をお届けします。