Vol. 25

ノンセクシャルであることは不幸か

投稿日

2023.12.24

こんにちは。カラーズに入会し、友情結婚(成婚退会)しました、佐藤です。
私はノンセクシャルで、他者に恋愛感情は持つものの性的な感情はありません。

自分はもしかしてノンセクシャルかもしれない、もしくはノンセクシャルだと確信したという方の中には、マイノリティがゆえに苦しい思いをしたり、他者と比べて不幸だと思ったことがある方もいるかもしれません。
私もノンセクシャルであることで苦しんだり、悲しかったこともありました。ですが、今は不幸だとはちっとも思わないし、むしろ自分が「ノンセクシャルだ」ということ自体を忘れつつあります。

目次

ノンセクシャルと自認したきっかけ

「Vol.22 ノンセクシャルの自認から友情結婚に至るまで」にも記載しましたが、自分がノンセクシャルと気付いたきっかけは、大学生の頃に付き合っていた相手から性的な接触を求められていたときに感じた嫌悪感でした。
今思えば高校生の時から少しその片鱗はあったようにも思います。好きな人とつき合うようになって、最初は毎日楽しく過ごしていましたが、ふと「あれ、私この人とあんなことやこんなことするの?」と想像すると、なんだか相手の事が好きじゃなくなった、という経験があります。
高校生の時は、私は本当にこの人のことが好きじゃなかったのかも、とあっさりしていましたが、大学生の頃は泣くほど辛かったです。

ノンセクシャルと自認したときの気持ち

それからインターネットで「ノンセクシャル」という言葉を知りました。その時は、自分と同じ人がいるんだとホッとすると同時に、これから私はどんな人生を歩むんだろう?と漠然とした不安があったことを覚えています。
ノンセクシャルを知ってすぐのときは、もちろん友情結婚という存在も知りませんでした。とはいえまだ学生だったので、結婚のことは全く考えていませんでしたし、頭の片隅でいつかは私もそういうことができるようになるかも…と思っていたのも事実です。

ノンセクシャルで一番辛かったこと

一番辛かったことは、やっぱり人と同じように恋愛結婚ができないと理解した時だったように思います。
「Vol.21 ノンセクシャルの私の恋愛遍歴」でも記載しましたが、ノンセクシャルの男性とお付き合いをしたことがあります。その時はその時ですごく幸せだったのですが、結局はセクシャリティとは違う理由でお別れをしました。
今思うと、彼との出会いは奇跡的だったのかなと思います。なかなかノンセクシャルの男性と出会うことは少ないですし、まして相手も自分を好きになってくれて、私も彼のことが好きになるのはすごい確率です。だからこそ、彼とお別れをした後は「もうこの先はノンセクシャルの人とお付き合いできることはないかも」と思いました。
それから誰かを好きになっても、「この人はノンセクシャルじゃない」「もしこの人が私を好きになってくれたとしても、性行為をしないといけない」と思うと、その先に踏み切ることはできませんでした。
周りの友人はどんどん結婚していくし、私もそういう目で見られていく。でも、私は普通には結婚できない。そう思った時期が、一番辛かったです。

友情結婚したら楽になった

結果、今は高橋さんと友情結婚をしているわけですが、友情結婚をしてからは自分がノンセクシャルだ!なんて思ったことがありません。そう思う必要がないですし、無理しなくていい、自分が自分のままでいられる生活がとても楽です。
それは、私と高橋さんの間に恋愛感情がなくても、お互いにうまく生活しているからだと思います。そう思うと、高橋さんとの出会いも奇跡的だったなと感じています。

ノンセクシャルの利点?

人によって色々あるかと思いますが、私は「自分を大切にできる」ことだと思っています。
これも人によりますが、私は恋愛感情もそれほどある方ではなく、いわゆる情熱的なタイプではありません。ある人は恋愛することこそが自分の中心で、パートナーに依存する人もいますよね。また、性的な感情があることで誰かと触れ合いたいという寂しさがあったり、セックスレスで悩んでいる人がいたりと、ノンセクシャルではないからこその悩みや感情もあると思います。
私の場合はそういったことは全くありません。高橋さんの気を遣わなくていいし、寂しいなんてちっとも思わないし、自分の好きなように自分の時間を使っています。
また、妊活する場合は排卵日を狙って性行為をしないといけませんよね。そういう「義務」でやることが苦痛に思う人も多いようです。私の場合はそれもありません。一足飛びに人工授精を選択したので、どちらかというと「治療」という意味合いが大きかったです。

ノンセクシャルは不幸の決め手じゃない

ノンセクシャルであることは、将来の選択肢を狭めるかもしれません。自分がやりたかったことができないかもしれません。思い描いていた未来に進めないかもしれません。
でも、それって誰しもそうで、誰でも色んな可能性を持っています。
子どもが欲しいと思っていた人が子どもを授かれない身体だったり、病気になってしまったり、恋愛感情はあるのに結婚相手が見つからなかったり……誰しも、思い描いている満点の人生を歩むことなんてできないんだと、今は思います。
私は恋愛結婚はできなかったけれど、楽しく暮らしています。毎日順調で、仕事もして、好きなように生活して、可愛い子どももいます。こういう生活が待っているなら、ノンセクシャルで良かったと思います。

友情結婚が私の人生を変えた

友情結婚が出来たからこそ、私はノンセクシャルで良かったと思えるのかもしれません。
初めて自分がノンセクシャルだと知ったあの日、まさかこんな人生を歩めるとは思っていませんでした。恋愛結婚は今でもいいなぁと思うけれど、だからといって誰かと性行為をしないといけないことを天秤にかけたら、全然友情結婚で良かったと思っています。
良かったことや幸せなことは、恋愛だけじゃなくても作れます。美味しい物を食べたり、仕事がうまくいったり、好きな物を買えたり、子どもと楽しく遊んだり。恋愛と代替はできなくても、同等の幸せは作れると思っています。
でも、幸せと引き換えに自分が嫌なことを一生しないといけないのは、とても辛いことです。だったら自分が嫌なことをしなくても得られる幸せを探した方がよっぽど良いです。
結果として、私は友情結婚をして、仕事も家庭も順調で、可愛い子どもに恵まれて楽しく暮らしています。

悩んでいる方、苦しんでいる方へ

ノンセクシャルは、不幸ではありません。悩むことや辛いことがあるかもしれないけれど、それは一生続くものではありません。
ノンセクシャルであることは、変えることはできません。どうか、『ノンセクシャルである自分』がどうしたら幸せになれるかを考えてください。自分が大切にしたいものは何か、どういう人生を描きたいのか、それに向かって何をすればいいのかを考えてください。
私の場合は、それが結婚であり、子どもを授かることでした。好きな人と結婚をしたいという気持ちはあったけれど、その根底には「子どもが欲しい」という気持ちがあったのです。だからなのか、恋愛的には好きではない高橋さんと結婚して子どもができた今、私はこれまでの人生の中で一番幸せだと思っています。
どうか自分を大切にして、『ノンセクシャルである自分』を受け入れて、幸せを探してみてください。

sato
著者:佐藤

10代でノンセクシャルを知り、20代で恋愛結婚はできないと断念。一念発起してカラーズに入会後、友情結婚(成婚退会)しました。人工授精で子どもを授かり、現在は夫の高橋さんと協力しながら子育て真っ最中。元友情結婚活動者、結婚当事者のリアルな姿をお届けします。