トランスジェンダーとしての婚活、そして運命の決断へ―僕が最後の一人を選んだ理由

Vol. 5
投稿日

2026.04.01

更新日

2026.04.15

こんにちは。サウニャンコ夫婦の夫、トト丸です。

前回の記事では、カラーズでの活動で出会った3名の方とのエピソードと、カラーズ独自の「話し合い冊子」を活用した深い対話のプロセスについてお話ししました。
>Vol.4[3人の候補者との対話と「話し合い冊子」―「なんとなく」を「確信」に変えるプロセス]

活動を通じて、僕は自分が理想とする「対等なパートナーシップ」や、生活を共にする上での具体的なイメージを固めることができました。しかし、僕にはトランスジェンダー当事者として、活動を始める前から常に心に抱えていた、言いようのない恐怖がありました。

今回は、その恐怖とどのように向き合い、友情結婚というフィールドで希望を見つけたのか。そして、最終的にAさんと成婚退会する決意を固めた理由について、詳しく振り返りたいと思います。

特に大きな不安を感じていたのが、「妊活」についてです。

トランスジェンダーの多くがそうであるように、僕には生殖機能がありません。そのため、子供を希望する際は、最初から第三者による精子提供(AID)と体外受精という選択肢しかありません。カラーズでの活動では身体的・金銭的負担の少ないタイミング法やシリンジ法などから検討される方が多いですが、僕の場合はスタートラインが異なります。

何より、「自分と血のつながった子供を持つことができない」という事実は、パートナー選びにおいて大きな不利になるのではないか、と考えていました。以前お付き合いしていた方から「あなたの血を引いた子がほしい」と言われたことがあり、その言葉は当時の僕にとって、どうしようもない現実を突きつけられる、寂しさや悔しさを伴うものでもありました。

ところが、友情結婚というフィールドに踏み出してみると、意外な事実に驚かされました。

「恋愛感情がない分、子供との血縁関係をそれほど重視しない」という考えを持つ方が、想像以上に多かったのです。実際にお会いした3人とも、「妊活がAIDからになることや、血のつながっていない子供が生まれること」に関しては、さほど気にならない様子でした。

カラーズで出会った方々は、自身もマイノリティとしての葛藤を抱えてきたからこそ、他者の境遇を自分事として捉えられる想像力に溢れていました。僕がトランスジェンダーであることを告げても、拒絶されるどころか「共に歩むパートナー候補」として真摯に向き合ってくれたことは、僕にとって一生の救いとなりました。

「トランスジェンダーやアセクシュアルだからといって、幸せを諦める必要はないんだ」

そう肌で感じられたことは、僕の人生にとって大きな転機となりました。これまでの不安は、一歩踏み出すことで「希望」へと変わっていったのです。

最終的に、共通の背景を持ち、深い安心感を覚えるAさんと、穏やかで、一緒にいて話が尽きないBさんで悩みました。本当に悩みました。

そこで僕は、話し合い期間が終盤に差し掛かっているAさんとあえて長時間一緒に過ごす「車での遠出デート」を試みることにしました。

それまでは、お洒落なカフェやレストランで冊子の内容を詰める「面接」のような対話が中心でした。しかし、いざ目的地へ向かう車中、ふと会話が途切れた瞬間があったんです。その時、僕は驚くほど心が穏やかな自分に気づきました。

「あ、無言の時間が全く気まずくない。」

気を使いすぎず、意見を言いたい時に言える。そして黙っていても心地いい。この「楽さ」こそが、これから何十年という長い歳月を共に過ごす上で、何よりも大切なものだと確信しました。

そして、この大きな決断をする上で、僕の心を軽くしてくれたもう一つの「気づき」がありました。それは、「もしダメであっても、死ぬわけじゃない。最悪、離婚すればいい」という、良い意味での開き直りでした。完璧な相手を求めすぎず、万が一の際の選択肢も視野に入れていたからこそ、迷いなく最後の一歩を踏み出せたのだと思います。

そんな心の整理がついたところで、最後にカラーズのスタッフの方に面談していただきました。担当スタッフの方は候補者全員を知っているので、「Aさんは柔らかい雰囲気を持っているので、温かい家庭を築いていけると思いますよ」と、優しく客観的な視点で僕の直感を裏付ける言葉をくれました。僕のことやお相手の方のことも把握してくれてるプロの意見は本当に参考になりました。担当スタッフの方に背中を押してもらったことで、迷いなく成婚退会へと進む決意が固まりました。

僕にとってカラーズでの活動は、単なる相手探しではなく「自分自身を深く知る作業」でした。僕にとって、Aさんとの話し合いがスムーズだったのは、お互いの歩んできた背景や、生活に対する価値観の「根っこ」が似ていたからだと思います。

今、婚活の海で迷っている方も、暗闇の中にいると感じている方も、滞りなくトントン拍子に進む相手はどこかに必ずいます。それまでの時間は、自分を磨くための「スキルアップ期間」だと割り切って、自分をすり減らしすぎないようにしてください。友情結婚というフィールドには、あなたの境遇を理解し、共に歩んでくれるパートナーが必ずいます。

次回は、成婚退会後の「共同生活」のリアルや、4匹の猫たちとの賑やかで穏やかな暮らしについてお届けします。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

saunyanko
著者:サウニャンコ夫婦

【夫:トト丸】
トランスジェンダーでアセクシャル。2022年夏にカラーズに入会し、同年冬にパートナーと成婚退会。現在は妻のミケ子と、猫4匹と穏やかな日々を過ごしている。恋愛を前提としない「友情結婚」という選択肢や、マイノリティとしての婚活経験を共有したいと思い、ブログに参加。名前の由来は共通の趣味のサウナ、猫から。

【妻:ミケ子】
ノンセクシャル。2022年夏にカラーズに入会し、同年冬にパートナーと成婚退会。現在は夫のトト丸と、猫4匹と穏やかな日々を過ごしている。恋愛を前提としない「友情結婚」という選択肢や、マイノリティとしての婚活経験を共有したいと思い、ブログに参加。名前の由来は共通の趣味のサウナ、猫から。