「交際0日婚」や「友情結婚」をどう読み解くか〜恋愛の“段取り”が必須ではなくなる時代に生きる、私たちの選択〜

投稿日

2025.10.24

お笑いコンビ「エレガント人生」の“交際0日婚”のニュースが話題だ(参照:「友情結婚」「交際0日婚」に共感する若者たちの本音 「恋愛はめんどうくさい」「経済合理性の面からも正しい選択」…Z世代に浸透しつつある新たな結婚の価値観)。恋愛ステップを省略する結婚のかたちとして「合理的」と肯定する声がある一方で、「絶対上手くいかない」「結婚を軽く見すぎ」という批判が考えられるのも事実。

しかしこの動きは、ただの話題性ではなく、一つの時代の流れではないだろうか。「友情結婚」や「交際0日婚」と呼ばれる結婚のかたちは、恋愛を経ることが“当然”とされてきたこれまでの結婚観を問い直す、大きなムーブメントの入り口なのではないか。

上記に挙げたニュース記事のなかで、21歳男性のAさんは「恋愛はめんどうくさいが結婚はしたい」と語っている。恋愛にはお金も時間も気力も必要で、理不尽に感じることもしばしばある。でも「将来、家庭を築きたい」「子どもは欲しい」と思う気持ちは捨てていない。

つまり、恋愛をしたくない=結婚を諦めた、ではないのだ。むしろ「恋愛を経なくても結婚というゴールに到達したい」「恋愛と結婚は別物だ」という、ごく自然な感覚が生まれている。

この感覚は、Z世代だけの特殊な感覚ではない。筆者自身、友情婚をテーマとしたイベントを運営し、オンラインや対面で多くの当事者の声を聞くなかで、「恋愛感情はないけれど、信頼できる誰かとパートナーシップを構築したい」という願いがどれほど多く存在するかを実感してきた。

ニュース記事のBさん(25歳)は「交際0日婚はコスパがいい」と語る。結婚目的でマッチングアプリを利用しながら、恋愛段階で時間を消費してしまうと機会損失だという論理だ。この言葉だけを切り取ると冷たい発言のようにも思えるが、その背景には「人生の限られた時間を、自分の幸せのために使いたい」「不確実な恋愛よりも、確実に信頼できるパートナーを選びたい」という切実な願いがある。

恋愛が価値の中心にあり、「恋をしてこそ人は成長する」「苦しみこそ恋のスパイス」とされてきた時代は終わりつつあるのかもしれない。

恋愛が向いていない人もいる。恋愛感情がグレーな人もいる。そもそも「好き」という感覚自体が一定でなく、日によって揺れる人だっている。そうした人々が「恋愛を前提にしない生き方」を肯定的に語り始めた。それがいま、現実として見えてきている。

記事に登場する24歳女性のCさんは「恋愛感情よりも、信頼できる生活のパートナーがほしい」と語っていた。恋愛をすっ飛ばすのではない。恋愛以外の軸で人との関係を築きたいというだけのことだ。

筆者が運営に携わるイベントでも、「恋愛に興味はないけれど、一緒にご飯をつくったり、生活のリズムを共有したり、いざというとき助け合える人がほしい」という声が多い。なかには「恋愛関係になると疲れる」「友達だからこそ素直に頼れる」という人もいる。

恋愛とは、パートナーシップの数ある形のうちのひとつにすぎない。友情婚や交際0日婚は、恋愛の否定ではなく、「恋愛以外のつながりも、結婚や家族の土台になり得る」という可能性を示しているのだ。

「恋愛感情がわからない」と言ったとき、「それはトラウマのせい?」「本当は怖いだけでしょ」「本当に好きな人ができたら変わるよ」と返される人がいる。「結婚しない」と言うと、「諦めているの?」「誰かに選ばれたいと思わないの?」と問われる人がいる。

これらの言葉は、恋愛や結婚こそが幸せのゴールであるという、古くて強固な前提から生まれている。しかし、その前提そのものを疑う人たちがいま、声をあげ始めている。「恋愛ってしなければいけないものなの?」「恋愛しない人生にも幸せはあるのでは?」という問いが、当たり前のものとして語られ始めている。

交際0日婚や友情結婚の広がりは、単なる流行ではない。新しい“家族のかたち”を模索し始めた人たちの、リアルな声の反映なのだ。恋愛を通らない結婚も、幸福の道である。社会は少しずつ、恋愛を強制しない世界へとシフトし始めている。

大事なのは「恋をしているかどうか」ではなく、「自分がどんな関係を築きたいか」「どんな安心や自由を大切にしたいか」だ。

もしかしたらこれからの人生で、私たちはこう問い直すのかもしれない。

――あなたは、誰と生きたいですか?

――その人と、どんな人生を育てていきたいですか?

恋愛というフィルターを一度外してみることで、見えてくる未来がある。そこには、これまで想像していなかった、でも確かに自分が望んでいた幸福のかたちが眠っているのかもしれない。

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【書籍情報】
書名: 『友情結婚 新しい結婚の選択肢』
著者: 中村 光沙 出版社: 幻冬舎

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北村有
著者:北村有

主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。(FrieMa+のイベント企画運営を担当)

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