中国の形式結婚の実情とは?友情結婚や偽装結婚との違い

投稿日

2023.03.14

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1. 形式結婚とは

中国における「形式結婚」とは、レズビアンやゲイなどの同性愛者の人たちが、互いに恋愛相手がいる状態で形式的に婚姻し仮面夫婦となることを指します。日本においても似た結婚形態として「友情結婚」と呼ばれるものがあります。

2. 友情結婚・偽装結婚と形式結婚の違い

「形式結婚」と近しいものとして「友情結婚」がありますが、厳密にはそれぞれの指す中身は違います。

「友情結婚」とは、恋愛感情や性愛を持たない相手と、友情や信頼関係に基づいて婚姻し夫婦となることを指します。つまり、入籍・ビザ・金銭目的など婚姻の意思がないにも関わらず結婚する「偽装結婚」とは異なります。「友情結婚」には、結婚に意欲的でない人が友人のように居心地の良い同居人が欲しいといった目的から結ぶ婚約も含まれ、パートナーと性行為を行わないということ以外は恋愛結婚と変わりません。そのため、「友情結婚」は多様な生き方のうちの選択肢の1つとして存在しており、前向き・ポジティブな結婚形態であるといえます。

一方で、中国で行われている「形式結婚」は、同性愛者の人たちが手続き上の婚姻関係を結ぶということから、どちらかというと「偽装結婚」に近い形態であるといえます。中国では同性愛者に対する風当たりが強く、自分が同性愛であることを打ち明けずに異性と結婚する人が多くいます。異性との結婚後、パートナーが同性愛者であることを知って自殺する人もいるほどです。このように、中国社会は同性愛を周囲に打ち上げることが難しい環境であるため、同性愛者が自分らしく生きるための手段として互いにパートナーがいる同性愛者同士が形だけ婚姻関係を結ぶ「形式結婚」が存在しています。

3. 形式結婚が誕生した背景

中国ではなぜ「形式結婚」が行われるようになったのでしょうか。先ほども少し触れましたが、「形式結婚」が行われる背景には、中国社会の同性愛者に対する根強い差別や偏見が影響しています。

中国では、同性愛者は異端として扱われ、差別・排除されてきた歴史があります。実際に中国では1997年まで同性愛者は罪人として扱われており、「流氓罪(りゅうぼうざい)」と呼ばれる罪に問われていました。同年に刑法が改定され、同性愛そのものは法的に認められたものの、2001年まで同性愛者は精神疾患として扱われてきました。現在は、同性愛者を縛る法律や制度は存在していませんが、未だに同性愛者に対する差別や偏見は続いています。例えば、2018年にはボーイズラブを描く小説家に対し、懲役10年半の実刑判決が下されました。判決理由は、「違法の出版物で多くの収入を得たため」というものであり、同性愛に対する厳しい状況が続いていることが伺えます。また、中国では同性愛者の夫を持つ妻は「同妻(トンチー)」と呼ばれますが、その中には結婚後に夫が同性愛者であることを知り、ショックから自殺する人もいます。そのため、同性愛者は異性と結婚しても、本当のことを相手に隠しながら過ごしており、心穏やかに結婚生活を送ることができません。

以上のように、中国では同性愛者が本当の自分をオープンにさらけ出して生きることが難しい環境となっているため、同性愛者たちが自分らしく生きるための選択肢の1つとして「形式結婚」が存在しています。

4. 同性愛に対する価値観の変遷

ここまで「形式結婚」の概要と背景について述べてきましたが、そもそもなぜ中国では同性愛者に対する風当たりが強いのでしょうか。そこで、中国社会の同性愛に対する価値観の変遷や歴史を見ていきましょう。

近代以前の中国一般社会では、現代に比べて同性愛に対して寛容であったと言われています。特に、現代でいうゲイ(男性の同性愛)は、個人的な好みの問題であると考えられていました。例えば、三国志では、劉備、張飛、関羽が「義兄弟」の契りを結んでいますが、これは血縁のない男性同士が兄弟のような盟友関係(家族に近しいもの)になることを指します。明代や清代では似た関係を表す言葉として「契兄弟」という呼ばれ方をしていました。

しかしその後、同性愛に対する政府の対応が厳しいものになっていきます。明の建国後には、同性愛は違法であると判断が下され、12代皇帝である嘉靖帝の時代には、同性同士での性交渉は違法であると法的に明確に定められました。清代では、性交渉だけでなく同性愛行為そのものが刑罰の対象として定められました。

このように歴史をさかのぼると、はじめ同性愛は個人の問題として許されるものでありましたが、次第に政府から法的に罰せられるほどに厳しくなっていきました。このような大きな変化の理由は、儒教の考え方と同性愛が相容れないものであったということにあります。

儒教の重要な経典の一つに『礼記』というものがあり、この中に夫婦や婚姻に関する記載があります。『礼記』は、男女関係や婚姻関係を重視しており、穏やかな婚姻関係こそが家庭の和睦、最終的に安定した政権運営につながると説いています。すなわち、男女間の婚姻関係を前提にしており、これは同性愛と相対する考え方となっています。また、子孫を残すことが祖先に対する孝行であるという考えもあり、同じ血縁関係となる子孫を残すことができないことも同性愛が避けられてきた要因の一つです。

以上のように、同性愛は中国人の思想に大きく影響を与えている儒教の教えを破るものであるため、政府が同性愛を厳しく取り締まり罰するようになりました。結果的に、中国社会全体においても同性愛に対して差別的な見方がなされるようになったと考えられます。

5. 同性愛の現実

現代の中国において、法律的に同性愛は認められたものの、いまだに差別の対象とされたり、病気として扱われるという風潮は残っています。そのために「形式結婚」という結婚形態が生まれ、同性愛者たちは周囲に知られないようにパートナーとの恋愛関係を続けています。しかしながら、同性愛者が周囲の人たちから激しい非難を浴びたり、露骨に虐げられるわけではありません。中国社会で同性愛者が避けられる理由には、「中庸」という考え方も影響しています。

「中庸」とは、儒教における概念の一つで、「偏りがなく中立的であること、適度にバランスをとって行動すること」を意味します。同性愛に対して罪であると感じていたり、逆に同性愛が認められるべきであると考えていたとしても、自分とは無関係であるが故に特に何もしないということです。「特に何もしないという」という表現には、理解に努めようとしないという意味も込められています。中国人の多くが、同性愛を「忌み嫌うべきもの」「異常なもの」として捉えていますが、通説として刷り込まれていることが多く、実際は彼らの多くが同性愛について、同性愛の何が悪いかに関してきちんと理解していません。

このように、中国人の多くが自分とは無関係であると思い、同性愛に対して理解しようとしないため、同性愛者たちが暮らしにくい社会となり、結果的に「形式結婚」を助長しているといえます。

6. 「形式結婚」のための手続き

ここまで「形式結婚」の内容と背景、同性愛に対する価値観の歴史などについて述べてきました。最後に中国の婚姻手続きについて、日本における婚姻の成立条件と比較しながら見ていきます。

まず、婚姻意思についてです。中国の法律では、結婚は男女双方の完全な自由意思による必要があり、両者の婚姻意思が必要となります。いずれかが相手に対して強要することは許されず、また第三者の干渉も認められていません。これは日本でも同様で、当事者の二人に婚姻の意思がなければ、仮に婚姻届けが提出されたとしてもその婚姻は無効となります。これより、互いに恋愛感情がなくとも同性愛者同士で合意がとれていれば婚姻することが可能になります。
続いて年齢ですが、中国で婚姻できる条件は、「男性22歳以上・女性20歳以上」となっています。一方で日本の場合、「男性18歳以上・女性18歳以上」となっており、中国人は日本よりも婚姻適齢が高くなっています。

続いて、重婚についてです。中国では、すでに配偶者を有する人が新たに他の人と同棲することを禁止しています。また、内縁や事実婚(法律上の届出を出さない状態で同居すること)も禁止されています。日本では、内縁や事実婚は特に禁止されていません。

続いて、近親婚についてですが、中国では4親等以内、日本では3親等以内の血族との婚姻が認められていません。つまり、日本では従兄弟との婚姻が可能ですが、中国では従兄弟との婚姻はできません。
父母の同意についてですが、日本では未成年者が婚姻する場合には同意が必要となりますが、中国では婚姻適齢が成人年齢を過ぎているため、父母の同意を得る必要はありません。したがって、中国で形式結婚する場合には、婚姻関係を結ぶ相手などについて必ずしも両親に伝える必要がありません。

最後に婚姻手続きに関してですが、中国では婚姻意思のある男女双方が自ら窓口に出向いて結婚登記をする必要があります。登記を済ませ、「結婚証」を取得して初めて婚姻が成立します。一方、日本では必ずしも当事者が出頭する必要はなく、第三者による提出や郵送も可能となっており、届け出ることで婚姻が成立します。

以上より、同性愛者本人達が形式的な婚約に同意しているのであれば、親に報告することなく、当事者間の意思のみで婚姻することが可能です。

7. まとめ

本記事では、中国の「形式結婚」の実情や背景、友情結婚との違い、中国社会の同性愛に対する価値観や歴史、また日本との婚姻手続きの違いなどについてまとめました。中国の「形式結婚」は、周囲の人たちに同性愛者であることを打ち明けられない人たちが、本来の姿を見せずに生きていくための手段としてあります。本記事を通して、中国では同性愛者の人たちがありのままに暮らしていくのが難しいといった現状を知っていただければ、とても幸いです。

 

参考文献

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小川富之,「アジアにおける同性婚に対する法的対応 ー家族・婚姻の視点からー」,2015年度福岡大学法科大学院国際シンポジウム資料,2016年3月,59-65ページ,URL:https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3970&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
任夢渓,「『礼記』における女性観ー儒教的女子教育の起点ー」,雑誌名:『文化交渉:東アジア文化研究科院生論文集』,2015年2月,4巻99-111ページ,URL:https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=12700&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1

安田峰俊,「中国のLGBTはいま、こんな差別を受けている」,2018年4月,URL:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55368

ライトハウス行政書士事務所,「中国と日本の『婚姻要件の違い』」,URL:https://lighthouse88.com/spouse-child-japanese/law-china-japan/

川原田健雄,「『親のため』同性愛、苦渋の偽装結婚 偏見根強い中国 海外で代理出産も」,西日本新聞,2020年8月,URL:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/638160/

「”BL”小説家に実刑判決 LGBTに厳しい環境 中国」,テレ朝ニュース,2019年1月,URL:https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000146560.html

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著者:代表中村

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